愛知県みよし市にあるこの住宅は、耐震診断をきっかけにご相談をいただきました。ご家族の暮らし方の希望をとりまとめ、ワークショップをしつつ設計を重ねました。現世代や次世代に末永く住んでいただくために建築家のアイデアを押し付けるのではなく、アイデアを提示しながら検討してすすんでいたのですが、キーワードはご家族の思い出とつながり・これからの暮らしや育児への覚悟と準備だったという思いがあります。

世代と暮らしを繋ぐために住宅づくり

  • 解体した家族が長く暮らした家からレスキューした欄間を 玄関の正面にインテリアポイントとして据えました。
  • 家族の収納を1階の中心に置いてファミリークロゼットとし、物を集中管理できるようにしました。
  • ガス衣類乾燥機を中心に各所に室内干しを配置し、洗濯ストレスを軽減。家事スペースを生活空間になじむ使いやすくおしゃれにデザイン化しました。
  • キッチン横や家事デスクにマグネットホワイトボードを配置して 情報共有とコミュニケーションをしやすくしました。
  • トーヨーキッチンの足元が浮いているキッチンと 耐久性のあるホーローのタカラの収納キャビネットという最強の掃除コンビを採用。機能性にあふれるキッチンです。
  • 隣に暮らす親御さんの家との関係性を大切にしながら、ウッドデッキを介しての出入りや勝手口の運用、二つの家の窓の位置などを考慮しました。

世代と暮らしを繋ぐために家づくりを考えると 住宅が単なる箱ではなくいろいろな側面を持ってくれますね。余談ではありますが敷地の一帯は古くから人の営みがあった地区でしたので基礎工事の前に地盤を調査しましたところ、奈良時代の茶碗が地盤から出土しました。そんな昔から人々・家族の暮らしがあったと思うと少々感動。その上に新築するというのは本当に暮らしを繋ぐのだなと・・・。

環境配慮の家(断熱・気密・省エネ・創エネ)

性能的にも長期優良住宅を取得して耐震等級3で設計し、温熱計算も行いました。断熱工事後に工事監理のために気密測定も行いました。24時間換気はダクトレス熱交換式の換気扇を使って、太陽光も設置したエコハウスです。熱交換換気は(誤解されやすいのですが)室内の温度と外の外気をできるだけ同じくして換気するシステムです。管理しやすくダクトや大袈裟な躯体構造をまきこんでいません。維持管理のしやすいことはSDG’Sの極みと言えるでしょう。

省エネは断熱だけでなく、給湯器はエコワンというガスと電気のハイブリット給湯器でお湯と床暖房をささえ光熱費は節約します。もちろん太陽光も搭載していますから、創エネでもあります。

暮らしやすい個性的な間取り・日本的さ

リビングにはソファなどは置かず、床暖房の畳でくつろげる空間にしました。天井には檜天然木の羽目板や檜の柱を配置し、和モダンな雰囲気に仕上げました。キッチンはポップなデザインなのですが日本的なリビングや玄関にもなじむような色合いで空間が包まれているので ゆったり落ち着きます。

階段も間接照明で上がっていくと、廊下は畳敷きで本棚があります。廊下兼読書室としても使えます。畳とするだけで人が移動する通路と床でくつろぐ場所が共有できるなんて、日本文化って私たちに色々なものを与えてくれます。よく見るリビングの畳コーナーは平面図を間取りとしてみると大きなソファを置いてあるだけ、という場合も多いです。

照明も天井からの直接光だけでなく壁や天井を照らして 空間を楽しむ。間接照明は日本的なものにもなじみます。

デザイン優先というイメージかもしれませんが、この住宅は性能や過去・未来への配慮も兼ね備えた普遍的なデザインと設計です。深い家だと考えてしまいました。